「郵送物が開けない」をAI自動化でハックした話|AI駆動開発の身近な事例
この記事で分かること
- 「郵送物が開けられない」という日常の悩みをAI自動化でハックした実験の詳細
- スキャナ × ChatGPT × Hazel(Macの自動化ツール)を組み合わせたワークフロー設計
- AI駆動開発は「プロダクトを作る」だけでなく自分自身をハックする手段になるという視点
プロダクトを作るだけがAI駆動開発じゃない。身の回りの「できないこと」「面倒なこと」を自動化で解決する——そんな使い方の事例として読んでもらえるとうれしいのだ。
僕には「郵送物が開けられない」という悪癖がある
唐突だけど、告白させてほしい。
僕は郵便物が開けられない。
ポストを見に行かない。見に行っても封筒を机の上に積んだまま放置する。そしてそのまま何日も、ときには何週間も経ってしまう。
一人法人(株式会社CAEN)を経営しているので、税務署からの書類や市区町村からの通知、社会保険関係の案内など、「開封して何らかの対応が必要なもの」がちゃんと届く。それでも開けられない。
「開けたら早いじゃないか」はそうなんだけど、開けられない理由がある。
封筒を開けると、難しい書類が入っているから。
行政の書類って、正直わかりにくい。何を言っているのか、自分に何が必要なのか、すぐには飲み込めない。その「難しいかもしれない」という予感が積み重なって、ついに開封という行為に対して心理的ブレーキがかかってしまう。
これは気合でどうにかしようとしたこともある。レターオープナーを買ってみたこともある。でも根本的には解決しなかった。
そこで思ったのだ。AIで解決できないか、と。
ボトルネックを特定する:「難しさ」が問題だった
郵送物が開けられないという問題を分解してみると、ボトルネックは「開封」そのものではなかった。
正確には——
- 封筒を開ける(これは数秒で終わる)
- 書類を読んで理解する(ここが詰まる)
- 対応・保管・廃棄を判断する(理解できないから判断もできない)
つまり詰まっているのはステップ2だ。「書類の内容を自分の頭で理解する」というプロセスが最大のボトルネック だったのだ。
ならば、そこをAIに任せればいい。
AIは今、画像認識も自然言語理解もかなり高水準になっている。写真を撮って送れば、何が書いてあるかを読み取り、どう対応すればいいかを教えてくれる。2025年前後からChatGPTのビジョン機能(画像理解)とウェブ検索機能の精度が実用レベルに上がったことで、こういった使い方が現実的になった。
書類の通訳を、AIに外注する。
発想としてはシンプルだけど、これがけっこう強力なハックだと気づいた。
設計したワークフロー
具体的にどう自動化するかを考えた。
ツール構成
- スキャナ:キヤノンのコスパのいいドキュメントスキャナ(ChatGPTに聞いて選定)
- Mac の Finder:スキャンデータの受け取り口
- Hazel:Mac 用のファイル自動化アプリ(有料)。特定フォルダにファイルが入ったら自動でアクションを実行できる
- ChatGPT API:書類の内容を解析して仕分け判定する
フロー
郵便物を受け取る
↓
開封して中身をスキャナに通す
↓
PDF が特定フォルダ(スキャン受け取りフォルダ)に保存される
↓
Hazel が PDF の追加を検知 → ChatGPT に送信
↓
ChatGPT が書類を解析して3種類に分類:
01_対応必要(〇〇日までに手続き等)
02_保管でOK
03_破棄してOK
↓
分類結果に応じたフォルダに自動で振り分け
自分が手を動かすのは「封筒を開けてスキャナに通す」だけ。あとはMacが自動で処理してくれる。
これがうまく動けば、「難しい書類の理解」というボトルネックをまるごとスキップできる。対応が必要なもの(01フォルダ)に入ったものだけを確認して動けばいい。
Mac の自動化ツール:Automator vs Hazel
ここで少し補足しておきたいのが、自動化ツールの選択肢について。
Mac には標準で Automator(オートマトン)という自動化ツールが入っている。「特定フォルダにファイルが追加されたらXXをする」というワークフローは、Automator でも構築できる。
Hazel は有料のサードパーティアプリだが、Automator よりも条件分岐が柔軟で、複雑なルールを組みやすい。今回のケースのように「ファイルの中身をAI APIに投げて、その返答を見てフォルダを振り分ける」といった処理には、Hazel の方が適している。
ただ、正直に言うと——Hazel の使い方が思ったより難しかった。
API 連携の設定まわりでつまずいて、この記事を書いている時点ではまだ完全には動作していない。近いうちにちゃんと完成させたいと思っているのだが、「設計は固まっているのに実装できていない」という状態で、それもひとつのリアルな個人開発あるあるとして正直に書いておく。
スマホだけでも今すぐできる代替案
完全自動化の前段階として、もっとシンプルな方法もある。
スマホの ChatGPT アプリで写真を撮って送るだけ。
ChatGPT のビジョン機能は、書類の画像から文字を読み取り、内容を解説して、何をすべきかを教えてくれる。ウェブ検索機能も実用レベルに達しているので、「この書類はどういう手続きが必要か」まで調べてくれる。
完全な自動化じゃないけど、「書類を自分の頭で理解しなければならない」というボトルネックは同様に解消できる。 まずはここから試してみるのがいいかもしれない。
AI駆動開発は「自分をハックする」ことができる
この話で僕が一番伝えたかったのは、ワークフローの詳細よりもその背景にある考え方だ。
AI駆動開発というと、アプリを作る・サービスを公開する・収益を得る、というプロダクト開発の文脈で語られることが多い。もちろんそれは大事で、僕自身もそういったプロダクト開発をメインでやっている。
でも、自分自身の「できないこと」や「面倒なこと」をAIで解決するという使い方も、同じくらい価値がある。
今回のケースで言えば——
- 封筒が開けられないという個人的な課題
- その根本にある「書類が難しい」という問題
- それをAI×自動化でバイパスする設計
これはプロダクトとして誰かに売るものではなく、自分自身のためだけに作る自動化 だ。AIが普及する前は、こういった自動化はプログラミングの専門知識がある人にしかできなかった。でも今は違う。AI駆動開発の力を借りれば、プログラミングを本職にしていない人でも、自分専用のツールを作れる。
AI駆動開発を始めてからの体験でも書いたけど、「自分が一番必要としているもの」を自分で作れるというのは、本当に夢がある話だと思う。
さらに言えば、こういった「自分のための自動化」が思いのほか便利だったとき、それを誰かに使わせる形にアプリ化して——そこから副業や収益につながるルートも、全然あり得る話だ。
まずは身の回りの「これ面倒だな」「これできないな」というポイントを、AI駆動開発で解決してみる。そこから始めるのが、一番続く動機になると思っている。
AI自動化の設計に使えるアイデア集
今回の郵便物の事例を踏まえて、似たような「日常の課題をAI自動化でハック」できそうなパターンをいくつか挙げておく。
- 領収書・レシートの自動仕分け:スキャナ or スマホで撮影 → AIで分類 → 経費フォルダへ
- 読みたい記事の要約:RSSやブックマークに入れたURLをAIに通してサマリを作る
- メールの優先度判定:受信したメールをAIで「今日対応」「後で見る」「無視」に分類
いずれもベースの考え方は同じで、「自分がボトルネックになっているステップをAIに任せる」というシンプルな設計思想だ。
MCPを使った自動化のレシピについてはMCPで広がるAI自動化のレシピ集でも詳しく書いているので、合わせて読んでほしい。
AI駆動開発を始めるとこういうことができる
「アイデアはあるけど、どう実現するかわからない」という段階から、実際に動くものを作るまでのステップがAI駆動開発でアイデアをAPIで形にする方法にまとまっている。
また、一人でも稼げる個人開発者になるためのAI駆動開発では、今回のような「自分のための自動化」が副業・収益化につながる可能性についても触れているので参考にしてほしい。
AI駆動開発の出発点は、大きなプロダクト構想じゃなくていい。「自分の生活の中のこれが嫌だな」という、小さなストレスから始めていい。そのストレスに対してAIで解決策を考えてみる——その習慣が、気づいたら「誰かの課題を解決するプロダクト」につながっていることも多い。
まずは一つ、身の回りの課題を見つけてみてほしいのだ。
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